概要
和田 竜
織田信長の石山本願寺攻めの時代のお話。
織田が石山本願寺を攻める際に兵糧攻めを行うが、石山本願寺は毛利家に海上から兵糧の輸送を懇願する。毛利家は上杉謙信の出方を見つつ、村上海賊に依頼して兵糧を準備する。戦略的に輸送は取り止めとしたにもかかわらず、主人公「景姫」の登場で、一転し戦闘に突入する。
その村上海賊の娘が主人公で海賊と言う立場でありながら、一向宗門徒、武士との人間関係と時流に翻弄されるお話。
感想:面白かった。★★★★★
時代考証は細かく書かれているのに、文体は読みやすくとっつきやすい。
当時の人々の考え方や今との常識の差などが表現されていて、「それが普通なんや」思えるところが良かった。
主人公の「戦」に対する考え方の変わり方やそれに伴う人への接し方なんかが「当時の人ならそうなるのかなあ」と考えさせられる部分も良かった。
戦国時代の人の命は今よりかなり軽く、老衰による死がむしろ稀であったろうと改めて思い直した。人生50年と言われた時代ではおっさんももうすぐ死ぬことになっている。当時の人はきっと自分の命すらも軽い時代を生きていたんだろう。
リアルに明日をも知れぬ命なんだから目いっぱい生きようとしていたように思えて、今の自分に置き換えてみたりした。置き換えた結果、覚悟は無いし、なまじっか死なないものだから、10年・20年先のことを心配するし、戦国時代ではきっと笑い者扱いだろうと想像したりして楽しくもあり、ほんとにそれで良いのか?と自問したりと色々思い返すことの多い本だった。
そんな中、特に共感できた人物として、臆病で保守的な弟、景近が自分と重なり、戦場と言う特殊な状況で一人前の海賊として成長していく様が羨ましくもあり、そういう時が来たとしたら、自分はどうするかなどと考えたりもした。
今のまま、戦国時代に行ったら、「戦場から逃げようとしたところを後ろから切られて死ぬんだろうなあ」なんて思いにふけって読みました。
気付いたこととして、少し穿(うが)った見方をするならば、娘の容姿が当時としては不美人だが、現代では美人な部類に入る設定となっている。
これは、「いずれ映画、ドラマになった場合に都合が良いようにだろうか?」なんて思ってしまった。
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